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君知るや伊東のオーケストラ

■ホルン 石井 博
かつて様々な芸術家が、明るい太陽と美しい海のイタリアに憧れたように、私にとって伊豆の地は、光に溢れ風薫る魅力的な場所でした。そんな伊豆の町伊東にオーケストラができたことを知り、第2回の定期演奏会を聴いたのは随分と前のことになります。懐かしい仲間の顔も何人か見える伊豆フィルハーモニーの響きは、温かく輝いて聞こえ、海岸を歩いて帰る伊東駅までの道は、風呂上がりの散歩のように爽やかだったことを覚えています。時は経ち、小田原のアマチュア音楽団体にいた私が、強制連行のように伊豆フィルの練習場である旭小学校に連れてこられ、その一員となることを決心させられたのは昨年のことでした。入団した要因は幾つかあるのですが、その大きな一つに旭小学校の自然に囲まれた豊かさがあります。伊豆の海が望める小高い山、木々に囲まれて建つ小学校の一室を借りた合奏練習では、心に沈み込んだ日々の屈託が消えていく清々しさを感じました。練習の音が止むと、開け放った窓からは蝉しぐれ、木々の葉を揺らす風の音、微かな潮の香が吹き抜けて「ああ、ここで決まりだ」と感激し、温かい誘いに感謝したのです。
音楽が好きなことは勿論、「好きこそ物の上手なれ」で上手な方ばかりなのでしょうね、とよく言われます。確かに羨ましいくらい上手な方も多いのですが、「好きだけど上手になれない人もいる」ことも事実。私も最後の手段で、楽器に「うまく音が出ますように」と念じたりしています。楽しそうに見える趣味の集まりですが、音楽上の役割に責任を持つ厳しさは当然あります。練習不足を観念して車に楽器を乗せ、伊東に向けて家を出るまでには、仕事とは違う自分との戦いがあったりします。こんな風に60人からの人たちが作り上げる音楽が面白くないはずがありません。今度の伊豆フィル定期演奏会では、演奏を聴きつつ、その様に一人一人を眺めると、違った親しみを感じて頂けるかも知れません。