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伊豆フィルの心意気が生んだ《運命&未完成》の大熱演!近藤憲一

■音楽評論家・伊豆フィルアドヴァイザー 近藤憲一 
 1995年、伊豆半島初のオーケストラとして産声を上げた「伊豆フィルハーモニー管弦楽団」。現在も伊豆地方唯一のオーケストラとして奮闘している姿を見ていると、楽員とスタッフ、彼らをサポートする多くの聴衆の情熱と努力に頭を下げたくなる。昨今の不況下で、伊豆フィルが創立15周年を迎えたことは、慶事と称えられてしかるべきだ。
 6月6日、本拠・伊東市観光会館での通算30回目の定期演奏会の日は、またも好天(伊豆フィルの公演日がいつも爽やかな天気なのは、“オーケストラの神様”の配慮?)。指揮は、伊豆フィル初振りの小屋敷真。プログラムがすごかった。《未完成交響曲》と《運命交響曲》という、日本では戦前から“二大交響曲”なのだ(1曲目に、ウェーバーの歌劇《オリアンテ》序曲)。僕は聴く前、少しばかり危惧していた。誰もが大好きでよく知っている不滅の名曲に、伊豆フィルが初手合わせの指揮者と挑戦する。生ではめったに聴けない《運命・未完成》を楽しみに集まってきたに違いない満員の聴衆を、果たして満足させられるのか。「これは快挙になるか、暴挙になるか?」といった気分だった。
 先にお断りしておくと、僕がアマオケを聴くとき、技術面をことさら云々するのは無意味だと思っている(プロより上手なはずがないから)。肝心なのは、アマオケらしく本番に全精力を注ぎ、ウィーン・フィルと同じ楽譜を誠実に弾いて、《未完成&運命》の真髄と魅力を聴衆に満喫してもらえるかだ。その結果は? 帰途に着く聴衆の表情が証明していた、「とても良い演奏だった!」ことを。破綻寸前の箇所もなくはなかったが、指揮者と一体になった楽員たちの意欲と情熱が、聴きなじんだ名曲のすばらしさを再認識させてくれた。
 次回の定期(11月)のヴェルディの超大作《レクイエム》も、“アマオケの鑑”のような演奏を聴かせてくれることだろう。そう思うだけで、もう心が熱くなってくる。

伊豆新聞5月29日掲載 「ヴィオラと私と伊豆フィルと」

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■ヴィオラ 斉藤 千晶
 A「ヴィオラって何?」、B「ヴァイオリンより少し大きいやつだよ。」、A「?」、B「えーと、チェロよりも小さいよ。」、A「??」、B「だから!一番地味なやつだよ。」、A「あっ、わかった!」。よくこんな会話がされるほど地味な弦楽器ヴィオラですが、実は温かみのある音でオーケストラの内声を受け持つ重要な楽器です。例えて言うなら大福のあんこ、シュークリームのカスタードのような味わい深い存在です。その魅力にひかれ弾き始めて今年で10年、節目の年を伊豆フィルで迎えるとは数年前までは予想できませんでした。
社会人になって以来仕事に追われ、弓を握れず悶々としていた時、伊豆フィルのサポーターである職場の先輩から入団案内をいただいたのが伊豆フィルとの出会いでした。見学初日、「ヴィオラが弾きたい!」という思いだけで飛び込んできた無鉄砲な自分を団員の方々が温かく迎えてくださったことは今でも忘れられません。この温かな雰囲気、懐の深さこそ、練習場所も演奏ホールも決して恵まれているとはいえない伊豆の地で、多くの人々の支持を集め、17年も活動を続けてきた伊豆フィルの秘密であると確信しています。
さて、今度の演奏会はヴィオラがショートケーキのイチゴ並みの主役を務めます。「運命」第2楽章にぜひご期待ください。私の音は「味わい深さ」には程遠いですが、受け入れてくれた伊豆フィルと聴きに来られる方々へ、感謝と敬意を込めて演奏をします。

伊豆新聞5月28日掲載  Sさんと「運命」

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■ホルン 津久井 文夫
 伊豆フィルの団員の中には、伊豆以外の遠くから参加している人達が結構います。私達夫婦も藤枝から練習に通っています。伊豆フィルが誕生した時に仕事の関係で下田に住んでいた縁で、以来十数年続けていましたが、5年前に結構しんどくなって退団させていただきました。しかし、この春また舞い戻ってしまいました。そうさせたのは、団員の皆さんの人柄のせいだと思います。
 ところで、楽団設立当初から親しくしてもらっていたSさんというトロンボーン奏者がいました。誰にでも声をかけ、誰とでも気さくに話をする、実におおらかな人でした。私にとっては、その人に会って交遊を深めることが、伊豆フィルへ行く一つの楽しみでした。しかし、平成11年に急逝されてしまい、本当に落胆したのを今でも覚えています。その時練習していた曲が、今回も演奏する「運命」で、曲名が如何にも何かを物語っているようでした。それから、早11年が経ち、伊豆フィルは再びその曲を演奏することになりました。Sさんを中心にワイワイやっていた仲間は、現在も伊豆フィルの主要なメンバーです。そのハーモニーを天に届けたいと思います。

伊豆新聞5月27日掲載「きっかけ」

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■クラりネット 杉山祥子
 そもそも、私がクラリネットを始めたきっかけは、幼馴染が楽器を貸してくれるという好意の一言でした。
音が出ることがとにかく楽しくて、毎日暴走列車が走るがごとく練習にのめりこみ勉強はまるで手をつけず、家族に心配されるほど考えるのは楽器のことばかりの毎日でした。
何年か経ち、だんだん楽器が吹けるようになってきた頃、同じ部活のひとりが一本のカセットテープを貸してくれました。
それが、初めて聞いたオーケストラの曲でした。
「なんて透き通った響きを奏でるんだろう!」と当時の私は感激し、もっといろいろな曲を聴いてみたい、どうせならやってみたい、とオーケストラに興味を抱くに至りました。
たまたまご縁もあって、伊豆フィルで演奏する機会をいただくことができ今があるのですが、すべてはふとしたきっかけから始まりました。
今回の演奏会は、誰もが知っているといわれる有名な曲「運命」「未完成」を同時に取り上げています。
何度も聞いたことはあるはずなのに、時間がたって聞いてみるとその度に新しい発見ばかり沸いてきて、今回の演奏会という機会がなければ気付けなかったこともたくさんありました。
演奏するのは年も経歴も、楽器を始めた理由もここにいるきっかけも違う色々な人たちの集まりです。
お気づきですか、舞台の上では必死の形相のようでも、実は楽しくて心中穏やかではないのです。
 そんな人たちの演奏が面白くないはずがありません。 
 この機会に、ぜひ、見にいらしてください。
素敵な音楽を知っていただくきっかけになれば幸いです。

伊豆新聞5月26日掲載  「名曲を聴きに来てください!」

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■ファゴット 小澤 誠
 伊豆フィルハーモニー管弦楽団第30回定期演奏会を6月6日(日)14時より伊東市観光会館ホールで開催します。今回は、小屋敷先生の指揮により、名曲中の名曲で皆さん良くご存知の「シューベルト交響曲第7番 未完成」と「ベートーヴェン交響曲第5番 運命」、メジャーではありませんが素晴しい「オイリアンテ序曲(ウェーバー作曲)」を演奏します。ここだけの話ですが、もちろんアンコールも皆さんご存知のBさんの作品を予定しています。
 実は、この様な誰でも知っている名曲を演奏するのは、結構大変で緊張の連続なんです。なぜかと言うと、「誰でも知っている=変な演奏をしたり間違えたりしたら一発でバレる!」、更に「CD等で名演奏が一杯聴ける=名演奏と比較される!」等、ごまかすことができないんです(誰も知らない曲なら、間違えても涼しい顔をしてごまかすこともできますが・・・)。だから、我々も名曲を名曲らしく演奏していると感じることができ、来ていただいた方にも名曲として感じていただける様、小屋敷先生の指導のもと練習に励んでおります。当日の演奏を期待してください。
 最後になりますが、これまで伊豆フィルに対し色々な方々よりご支援をいただき深くお礼を申し上げます。私は、創設後間もない時期に伊豆フィルに入団し、地域の方々に支えられた数少ないオーケストラの一つと感じ感謝しております。伊豆フィルを存続・発展させる為には、今後も皆様の支援が不可欠です。演奏会に来ていただき、名曲を聴いていただけると幸いです。

伊東でしか味わえぬ、演奏会 《第29回伊豆フィル定演に寄せて》

■医師 松永貞一(東京都葛飾区)
 杉谷昭子がベートーヴェンの皇帝を弾くというので伊東まで出かけた。CDは勿論、実演だって東京に居れば幾らでも聞く機会のある曲を、何故、わざわざそんな田舎町まで行くのだ?と、問われれば、普通は、その通りとこたえざるを得ないだろう。しかし、普通では無い人間が弾くとなれば、普通で無い行動をとらざるを得ない。
 はっきり言って、杉谷昭子は普通のピアニストではない。彼女の演奏の素晴らしさは、昨年の「レコード芸術」誌9月号の読者投書箱に、「フルヴェン、カザルス、カラス、ショウコ」という題で書いた。彼女の魅力は、天馬空を行くが如き自由闊達さと力強さの中に時に、非常に叙情的なフレーズが煌くところだ。日本、いや世界にあまた居るピアニストの中でもこれだけのピアノを聞かせる人間はそうは居ない。
 だが、資本主義の世の中、真実がいつでも幅を利かす訳では無い。芸術の世界でも、音楽産業の波に乗らなければ、どんな名人といえどもオーケストラをバックに皇帝を弾くなんてことは、そうは簡単な話ではないのだろ。杉谷が、どのサイドの音楽家かは知らない。しかし、彼女のソロコンサートはあまた聞いた僕も彼女のコンチェルトを聴いたことは無い。ならば、伊東だろうと地獄だろうと、行くしか無いではないか!
 彼女の皇帝は、昨年、平成21年12月13日の第29回伊豆フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会の中で演奏された。それは期待を裏切らない演奏であり、コンサートであった。その予兆は、当日の会場である伊東市観光会館の前に着いた時点ですでにあった。開場1時間前に会場の前にあった10mくらいの列が、開演30分前の開場時間には会場トグロを巻きにしていた。温泉地といえど12月の寒気の中に、聴衆の熱気がしっかりと感じ取れた。
 会場は満員。その中ではじまったスッペの「詩人と農夫」は、演奏技量の良し悪しを超えてアマチュア・オーケストラの真摯さが心を打つ演奏であった。2曲目が、お目当ての「皇帝」。勿論、杉谷のスタインウエーは第一楽章から輝き、第二楽章のアダージョでは、精神的安寧と祈りの歌が聞かれた。この時の杉谷の横顔が、かつて見たことが無い浄化された表情に見えたのは僕の幻想だったのだろうか?
 皇帝のあと、「エリーゼのために」が弾かれた。音楽好きなら一度は自分で奏でたことがあるこの易しい曲を、敢えてアンコールに選んだ杉谷の心意気や如何に!プロはこの平易な曲をこのように弾くのか!と、頭から水をかけられたような衝撃の体験であった。技術的に易しい易しくないとういうレヴェルを越えた音楽性の違いを、いやというほど痛感させられた
 皇帝の全3楽章を通して伊豆フィルは力演だった。これには、指揮者の田久保裕一氏の尽力と実力が大きく寄与した結果であろう。とてもアマチュアの集団とは思えなかった。また、それは、休憩後のミヨーの「屋根の上の牛」で遺憾なく発揮された。まさか、こんなアヴァンギャルドな曲を、実演で「堪能」できるとは夢にも思わなかった。すべての調が長・短で総出演という、奇妙だがノスタルジックなこの曲を、伊豆フィルはあたかも通俗名曲の一つであるかのように演奏してしまった。聴衆は十分、この曲の魅力を感じ堪能したことであろう。最後のチャイコフスキーの「ロメオとジュリエット」で、演奏者も聴衆も心が天国に向かったところでこの演奏会は幕を閉じた。
 東京の自宅に戻り、「わざわざ伊東まで行った価値があった?」と家人が聞いた。た。「うん、伊東でしか味わえぬ、伊東でこその、最高の演奏会だった。」と、僕は短く答えた。

15周年への期待感を高める、感じのいい演奏だった 《伊豆フィルハーモニー管弦楽団第29回定期演奏会 》

■音楽評論家・伊豆フィルアドヴァイザー  近藤憲一
 伊豆フィルの第29回定期演奏会を聴いた。温かさのある感じのいいコンサートであった。プログラムは、スッペの《詩人と農夫》序曲、ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第5番「皇帝」》、ミヨーのバレエ音楽《屋根の上の牛》、最後がチャイコフスキーの幻想序曲《ロメオとジュリエット》と、意欲に満ちた盛り沢山な内容。指揮は田久保裕一。
 元気溌剌と演奏された《詩人と農夫》に続く杉谷昭子独奏の《皇帝》は、古典派ピアノ音楽の演奏に大きな実績を残してきた杉谷が、楽員たちと心を通わせながら、ベートーヴェンの“親しく対話する”音楽の魅力を誠実に奏で、ベテランの持ち味を発揮した。
 後半の1曲目、アマオケが取り上げるのは珍しいミヨーのバレエ音楽で、伊豆フィルは好ましい挑戦ぶりを示した。2つの調性が混在して進み、聴き手を不思議な興奮で掻き立てる、演奏もかなり難しい音楽を楽しく聴かせた。トリの《ロメオとジュリエット》では、持てる力を全開させて、ロマン溢れる美しい旋律が次々と登場する大曲をドラマティックに歌い上げ、聴かせ上手の田久保の指揮によく応えていたのも印象的だった。
 伊豆フィルは来年いよいよ15周年。オーケストラとしての課題はまだ少なからず抱えているが、音楽に対する敬愛の心を失わず、音楽する喜びを誠実な演奏で伝えながら、なお一層市民に愛され支持されるオーケストラとして発展してほしいと念じてやまない。

田久保先生のこと

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■ヴァイオリン  武藤 都喜子
 また伊豆フィルの定期演奏会が近づきました。指揮者は、本年6月のファミリーコンサートと同じ田久保先生です。演奏会のあとで「指揮者の中で田久保先生が一番好きです。いい指揮者ですね。出始めがいいです。客席をくつろがせ、楽しませて下さる演出もお上手ですし・・・」という声を聞きました。
 そう言えば先生は、歌についてもくわしく、管楽器や打楽器は勿論、弦楽器では指や弓の使い方についてまで「この方がいいだろう」「こうしてくれ」と、要求を出され、最後までご自分の納得のいく音に近づくための工夫を熱心にされます。ファミリーコンサートのせいもあり、客席を意識してとんがり帽子をかぶってみたり、よく見つけてこられたと思うような衣装をまとったりして、楽しみながら指揮をされます。
 指揮棒を振るだけでも汗だくになるのに、振り終わるとすぐマイクを持って、客席に向かって次の曲の解説をされるという具合に、先生はいつも物静かな方ですが、ここぞという時にはねばり強さとたくましさを発揮されます。
 ナレーターのお話中に、その中に入ってひとりの役割を担当して雰囲気のある声を入れるなど、演技ではないはまり方で舞台を盛り上げられるのです。
 たしかにこれまでの指揮者にはないキャラクターの持ち主で、心から伊豆フィルを愛し、引き立てて下さいます。しばらく先生の指揮が続きましたが、来年は別の指揮者になりますから、田久保ファンにとって、今回はお馴染みの杉谷昭子さんをソリストに迎えることでもあり、必聴のチャンスになります。
 伊豆フィルには第2回から参加し続けて16年になりますが、これまでよい指揮者に恵まれました。私がヴァイオリンのレッスンを始めたのは、戦後まもなく、ストラデイバリウスで諏訪根自子奏でるツイゴイネルヴァイゼンに心を揺さぶられたからでしたが、そのころオーケストラの楽しみも覚えたのでした。
今回も精一杯頑張ります。終わったあとの達成感と至福の時を夢みながら・・・。

君知るや伊東のオーケストラ

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■ホルン 石井 博
 かつて様々な芸術家が、明るい太陽と美しい海のイタリアに憧れたように、私にとって伊豆の地は、光に溢れ風薫る魅力的な場所でした。そんな伊豆の町伊東にオーケストラができたことを知り、第2回の定期演奏会を聴いたのは随分と前のことになります。懐かしい仲間の顔も何人か見える伊豆フィルハーモニーの響きは、温かく輝いて聞こえ、海岸を歩いて帰る伊東駅までの道は、風呂上がりの散歩のように爽やかだったことを覚えています。時は経ち、小田原のアマチュア音楽団体にいた私が、強制連行のように伊豆フィルの練習場である旭小学校に連れてこられ、その一員となることを決心させられたのは昨年のことでした。入団した要因は幾つかあるのですが、その大きな一つに旭小学校の自然に囲まれた豊かさがあります。伊豆の海が望める小高い山、木々に囲まれて建つ小学校の一室を借りた合奏練習では、心に沈み込んだ日々の屈託が消えていく清々しさを感じました。練習の音が止むと、開け放った窓からは蝉しぐれ、木々の葉を揺らす風の音、微かな潮の香が吹き抜けて「ああ、ここで決まりだ」と感激し、温かい誘いに感謝したのです。
 音楽が好きなことは勿論、「好きこそ物の上手なれ」で上手な方ばかりなのでしょうね、とよく言われます。確かに羨ましいくらい上手な方も多いのですが、「好きだけど上手になれない人もいる」ことも事実。私も最後の手段で、楽器に「うまく音が出ますように」と念じたりしています。楽しそうに見える趣味の集まりですが、音楽上の役割に責任を持つ厳しさは当然あります。練習不足を観念して車に楽器を乗せ、伊東に向けて家を出るまでには、仕事とは違う自分との戦いがあったりします。こんな風に60人からの人たちが作り上げる音楽が面白くないはずがありません。今度の伊豆フィル定期演奏会では、演奏を聴きつつ、その様に一人一人を眺めると、違った親しみを感じて頂けるかも知れません。

実は楽しい現代音楽の名曲:屋根の上の牛

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■ヴァイオリン 原田武雄
 ここで紹介するのは、今回演奏されるミヨー作曲のバレー音楽、『屋根の牛』。
伊豆フィル定期演奏会では久々の20世紀の音楽。(ファミリーコンサートでは久石譲と かアンダーソンはやっていますが・・・・)
 現代音楽は、とっつきにくい、解りにくい、不協和音ばかり、とか、ともかく、食わず嫌いが多いのですが、意外とテレビでは使われてたりします。真央ちゃんが滑ってるアイススケートのBGMも、ハチャトリアンの仮面舞踏会という現代音楽です。短調でちょっと暗い感じがするものの、親しみやすい旋律とゴージャスな響きで、もう一度聴きたくなる様な曲です。
 今回演奏する屋根牛も、同様にとても親しみやすい曲です。この曲は、1917年、ミヨーが外交官としてブラジルに赴任していた頃の、陽気に楽しい思い出をイメージして作曲された曲です。 "ギッコギコッコ" って感じの、 のこぎりの様な音で奏でるサンバモドキのリズムに乗せて、当時のブラジルの流行曲を繋ぎ合わせたものです。なので、中身は 20世紀初頭のブラジルの歌謡曲メドレーだったりします。でも、ただのメドレーではありません。街を歩いていて、色々な音楽が聞こえる様に、全然違う旋律が同時に流れていたり。車のクラクションのように、 突然トランペットがパパパーと鳴ったり。裏路地から表通りに出てパっと明るくなる様に、哀愁たっぷりの旋律からパッと底抜けに明るい曲に変わったり。陽気だけど、ちょっと悲しいブラジルの街の風景が浮かび上がって くるような曲です。ジャンコクトーも大変この曲を気に入ったようで、あっと言う間に バレエの台本を書いて、パトロンを見つけてきて、シャンゼリゼ劇場で公演してしまいました。第一次大戦後、ジャズなどアメリカ文化が大挙して入ってきたパリ。ブラジルの親しみやすい旋律と陽気なリズム、さらにはお洒落な舞台芸術と愉快な大道芸人の演じるバレエ、ナンセンスな台本と相まって、大受けだったようです。
 今でも、パリにはこの作品から名前をとった『屋根の上の牛:Le Boeuf sur le Toit』というお洒落なレストランがあります。伊豆フィルの演奏を聞いたからには、パリに行った際には屋根の上の牛でのお食事などどうでしょうか?

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